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すいーと・すいーと

黎が管理・運営しているきまぐれブログです。 初めてお越しの方は、カテゴリー「about」内の「はじめに」という記事をご覧ください。 女性向け要素、同人要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。

2024.11.22
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2009.05.07

おはようございます、黎です。
捏造キャラ強化週間、ちょうど中間に差し掛かったところですね!
そんなわけで、まずはねねの話からアップさせていただきます。

今日アップする話は、ねねと半兵衛がふたりで話をしている、
ちょっとしんみりとした、
しかもちょっと分かりにくいかもしれない話です;
時期としては、恐らくねね殺害事件の、少し前。

うちの半兵衛とねねは、多くを語らずとも、
相手が思っていることを感じられるような間柄です。
(なので結果的に分かりにくくなりましたorz)
周りから見てどうかは別として、
本人たちはお互い「似ている」と感じている。
そんなふたりが交わす約束、それを書いたものでした。

今ちょっと読み直していて気付いたのですが、
そういえばこれ、普通に友垣設定で書いたので、
半兵衛が慶次君のことをあまり良く言ってないです(笑)
最近、慶半ばっかアップしてたから、すごく変な感じだ!!(笑)

それでは、お読みくださる方、どうぞ続きへとお進みくださいませ!





 


「約束」


「しばらく、ここにいてもいいかしら」
  そう言ってねねが部屋に入ってくることは、今までになかったと言っていい。見つめ返した彼女は、うっすらと穏やかな微笑みを浮かべている。半兵衛もまた僅かに笑むと、いつも通りの穏やかな声で言った。
「勿論」
「ありがとう、半兵衛」
  にっこりと笑い、ねねは半兵衛から少し離れたところに腰を下ろす。半兵衛が幾つかの文を認めている最中なのは、彼女もわかっていたことだ。半兵衛がこの屋敷に住むようになってから既に長く、半兵衛の日々の過ごし方は、ねねも十分承知している。
  そうして何を言うでもなく、ゆっくりと時が過ぎていく。今は屋敷の主たる秀吉は留守にしており、頻繁に遊びに来る慶次も、今日は来る気配がない。もっとも慶次が来なければ仕事がはかどるので、半兵衛としては有り難いことなのだが。漸く急ぎの文だけ認め終えると、半兵衛は小さく安堵の息を漏らした。それを聞きつけたねねが、そっと声をかけてくる。
「お仕事はおしまい? いつも大変ね」
「このくらい、どうということはないさ。前の主に仕えていた頃を思えば、極楽だよ」
「まぁ。優秀な軍師様は休む暇も頂けなかったの?」
「いや。あの人は…僕に対して、妙な執着を示してくれていたものだからね。秀吉のように、軍師として扱ってくれていた訳ではなかったんだ」
「そうだったの」
  少し言葉を濁した半兵衛に、ねねは苦笑気味に応じた。やや間があって、ねねは微笑みながらこう続ける。
「昔のお話を聞くのは初めてだわ」
「ああ…、そうだね。秀吉にも、あまり話さないことだし」
「慶次にも話さない?」
「なぜ彼に昔の話なんかしなければならないんだ」
「ふふっ、あなたは慶次と仲がいいから」
「……心外だな」
「きっと慶次もそう言うわね」
「やれやれ。僕をからかいに来たのかい、ねね」
  少し肩をすくめながら促すと、ねねがまたくすくすと笑う。そして問いに答える代わりに、彼女の方から問い返してきた。
「秀吉にも慶次にもしない話を、私には話してくれたのね」
  半兵衛が無言で見つめ返すと、ねねは小首を傾げて答えを促す。半兵衛は観念して、わざと小さく溜め息を漏らしながらこう答えた。
「君に対しては、つい…が多いね、僕は」
「ふふっ。嬉しいわ」
「僕の問いに答える気はないのかい、ねね?」
  少し意地悪な気持ちになって半兵衛が問うと、ねねはまたにっこりと笑い、半兵衛の背中にくっついてくる。秀吉に見られたら目を瞠られそうな程にくっつかれ、仕方なく半兵衛は肩の手に己のそれを重ねた。細い指は温かい。半兵衛の指先に、ねねの吐息がかかった。
「私、あなたと私は似ていると思っているの」
「……うん」
  穏やかな声で紡がれた言葉に、半兵衛も穏やかに応じた。
「私も半兵衛も、秀吉のことが大好き。大好きだから、彼のことを支えてあげたい」
「そうだね」
「秀吉も、私たちのこと、とても大事に思ってくれてるわ。大事だから、彼の考えていること、私にもわかるの」
「…ああ」
  あくまで静かで穏やかな声。半兵衛の背中に頬をすり寄せながら、ねねは自分の体を半兵衛に押しつける。半兵衛が困って少し体を動かすと、肩を掴まれた手にきゅっと力が入った。
「ねね、言いにくいけれど、僕も男なんだけどな」
「うん。…ねえ、私も、あなたのことが好きよ」
  変わらず穏やかな声で、ねねが唐突に告げる。半兵衛は特に驚くでもなく、諦めて背中の温もりを受け入れていた。肩を掴む小さな手、震えることもなく、強張ってもいない。
「大好きよ、兄さんみたいな半兵衛」
「…君は僕よりお姉さんじゃなかった?」
「女に歳の話をしては駄目よ」
  ふいに悪戯っぽい声に変わり、半兵衛は僅かに笑う。つられたようにねねも笑い、それから彼女は、小さな手を半兵衛の胸元に伸ばして、後ろから抱き締める格好になった。
「ねえ、私が、あなたが私と似ていて良かったって思ってるって言ったら、怒る?」
「いいや。光栄だよ」
「本当?」
「ああ」
  胸元の手を取って軽く握り締める。背中の温もりは心地良く、できれば失いたくはないものだ。だが、自分が口を挟む余地はない。それを理解しているからこそ、ねねもこうして話しに来たのだろう。共に秀吉の隣を歩むことを望み、彼の理想を信じた、それぞれひとりの男と女。
「じゃあ半兵衛には、安心してお願いできるわね」
  残された時間は僅かなのだと、もうわかっていた。
「なんだい、ねね」
「あなたは、きっとずっと、秀吉の隣を歩んでいてね」
「君も、共に来るのだろう?」
  ねねの手を握る手に、ほんの少しだけ力を込める。首を傾げて覗き込んだ顔が、困ったように笑っていた。
「意地悪はなしよ、半兵衛」
「君が言ったんだよ。僕と君は似ていると」
「ええ、言ったけれど」
「ならば、僕と共にあればいい。君がここにいてくれれば、僕は迷わず秀吉と共に歩むだろう」
  言いながら、握った手を胸に当てる。薄い胸の下には、確かに脈打つ命がある。
「もともと似ているのだから、僕と共にいる分には、秀吉が察して心動かされることもないさ」
「それは…ちょっと、さびしいわ」
「秀吉は君を愛しているよ」
  少し拗ねたように微笑むねねに、半兵衛は穏やかな声で告げた。わかってる、と言いたげに笑うと、ねねは再び半兵衛にくっついてくる。重なり合う鼓動。本当ならば、きっと自分のほうが先に果てるはずだろうのに。
「秀吉が選んだのがあなたで、嬉しい」
  不安など微塵も感じさせない声で、ねねが小さく呟いた。
「だから、あなたはきっと、ずっと秀吉と共に生きてね」
「……ああ」
「約束よ。大好きな、兄さんみたいな、私とよく似た半兵衛」
  ねねの手が、優しく半兵衛の胸元にしがみつく。半兵衛もまた、その手を優しく撫でた。
「僕も君が好きだよ、ねね」
「ええ、知ってるわ。ありがとう、半兵衛」
「お礼を言われることじゃない」
「いいえ、私が言いたいの」
  そう、と答えたそのとき、ふいに屋敷に現れた気配があった。考えるまでもない、ねねはすいと離れると、出迎えるべく立ち上がる。それから半兵衛を見て、にっこりといつもの微笑みを浮かべた。
「話せて良かったわ」
「そうかい、それは良かった」
「約束、破っては駄目よ」
「ああ」
  半兵衛がうなずくと、ねねは間もなく部屋を出ていく。ひとり残されたいつもの部屋、半兵衛は己の胸に手を伸ばした。命が脈打つその下に、蝕まれた部位がある。否、これで良かった。自分は、秀吉の隣で生きていなければならないのだから。
  せめて彼女との約束を守れるまでは生き延びるのだと言い聞かせながら、半兵衛もまた、ねねを追うように部屋から出ていった。


                                            幕

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戦BAの半兵衛と、FF7のザックラにぞっこんフィーバー中。

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