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すいーと・すいーと

黎が管理・運営しているきまぐれブログです。 初めてお越しの方は、カテゴリー「about」内の「はじめに」という記事をご覧ください。 女性向け要素、同人要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。

2024.11.22
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2009.07.07

久しぶりにザックラで小話をアップします。
前に小説をアップしたのって、一体いつ…!(汗)


実は、七夕伝説の記憶がかなり曖昧だったのに
調べることなく書き出してしまったため、
いたるところで大間違いをかましました(爆)

が、まあ…日本の話でもなし、
実際に又聞きの又聞きという形で話題に出しているだけなので、
まぁいいか、と……ゆ、許してください;;


それでは、短い小話ではありますが、
お読みくださる方はどうぞ続きへとお進みくださいませ!













 


「川を渡る」




「クラウド、七夕って知ってるか?」
 突然のザックスの言葉に、クラウドはきょとんとして首を傾げた。
「棚ぼた?」
「おぉ、さっすがクラウド。俺と同じこと言ってる」
 そんなふうに言いながら嬉しそうに笑われても、クラウドには意味が分からない。マイペースにシャワーの支度をしているザックスに、クラウドは少し唇を尖らせて問うた。
「じゃあ、なに?」
「たなばた。ウータイの祭りなんだってよ」
「それがどうかしたの?」
「うん」
 ザックスはおもむろに荷物を漁り出す。珍しく大事そうに鞄を抱えていたから、どうしたのだろう、とは思っていたけれど。
 間もなくザックスが探し出したのは、木とはまた違う、硬質で緑色の、細い葉をつけた植物だった。
「これ、笹っていうんだ。ウータイの植物で、七夕の時に紙に願い事書いてこれに付けるんだってよ。さっきウータイから戻ってきた友達がくれてさ、教えてくれたんだ」
「ふぅん…」
 ザックスは嬉しそうだが、クラウドはそんなに興味が持てない。願い事は所詮願い事であり、願ったからと叶う訳ではない。クラウドは、嫌というほど、おまじないの類いの無力さを知っている。多分「たなばた」というのも、そんなおまじないのひとつなのだろう。
「あんま興味ない?」
「ん、そんなこと、ない…」
「クラウドは嘘が下手だよなぁ」
 ザックスににこにこと苦笑され、なんだか恥ずかしくて視線を反らす。するとザックスが身を乗り出し、クラウドの目の前に現われた。
「わっ…」
「な、一緒に願い事書こ?」
「…でも、俺」
「俺とクラウドが一緒にお願いすれば、どんな願い事も叶うって!」
 なかなか乗ってこないクラウドに対し、ザックスは嫌な顔ひとつせず明るく言う。本当に、彼のあの自信はどこから来るのだろう? 羨ましいと同時に、クラウドはついつい見とれてしまう……自信に輝く恋しい人に。
「な、クラウド。俺の言うこと、信じてみない?」
 無邪気できらきらと輝く瞳。大好きな空色に見つめられれば、後はすんなりいつものパターン。
「…ん、じゃあ……ザックスと、一緒…に」
 すっかり絆されたクラウドは、頬を赤らめてはにかんだ。




 願い事を書くための色紙を縦長に切って、何を書こうかふたりで悩む。向かい合って座れるようにセッティングした机の前、黒髪と金糸はぴっとりくっついて仲良く揺れていた。つまりは毎度のまったりなのだが、愛しい人との時間であれば、ささいなことでも充分すぎるほど幸せなのだ。
 何度もくだらない答弁で笑い合った後、クラウドはふと思ってザックスを見上げた。
「あの…さ、ザックス」
「ん?」
「たなばたって、どんなお祭なのか、知ってる?」
「ん~、大雑把にしか知らないけど」
「ん、でも、知りたい」
 ふたりで盛り上がるうちに興奮してきたクラウドに問われれば、ザックスが断る理由はない。彼は「俺、説明すんの下手くそだけど」と照れながらに苦笑して、それからゆっくり語り出す。
「なんでも、ウータイに伝わってる昔話がもとなんだってよ」
「昔話?」
「ああ。すっごい愛し合ってる恋人同士がいたんだけど、いろいろあって、離れ離れになっちまったんだって」
「うん」
「でも、ふたりには、年に1回だけ会うことが許された。で、そのデートの日を七夕っていうらしい」
 クラウドは素直に頷きながら聞いていたが、またも小さな疑問が湧いてきた。今や好奇心の塊となったクラウドは、控え目にザックスを見上げてみる。
「それと願い事と、どんな関係があるの?」
「さぁ…。まぁ、その恋人たちの幸せにあやかろうってとこじゃないか?」
「なんか適当じゃない?」
「そんなもんだって」
「えー」
 納得できようができまいが、そんなことはどうでも良くって、クラウドはくすくすと笑っていた。つられてザックスも笑い出し、ちゅっとクラウドの額にキスをする。恥ずかしかったけれど、大好き、と言ってもらえた気がして、クラウドは幸せに頬を緩ませた。それに気を良くしたらしく、ザックスが優しく抱き締めてくる。クラウドも少しだけザックスに体重を預けた。
「そーいや、こんなのも聞いたっけな」
「なに?」
「その恋人たち、普段はでっかい川の対岸にいるんだって。で、年に1回だけ、白鳥が女を乗せて川を渡るんだってよ」
「ふーん…」
「な、やっぱここはさ、男が自力で会いに行くべきだと思わない?」
 至近距離で顔を覗かれる。意思の強い彼の瞳は、「俺ならそうする」と告げていた。確かに、きっと彼ならそうするだろう。考えるまでもないことだ。
「まぁ、昔話だし、どっちでもいいんじゃない?」
「つれないな~。俺なら、もしそんなことになったら、何がなんでも泳いで探しに行くけどな」
「言うと思った」
 クラウドが笑うと、ザックスが少し不満そうに「なんだよ~」と唇を尖らせる。でも、ザックスの気持ちが嬉しいクラウドは、視線は外して、照れ臭さに足を揺らしながらこう返した。
「ね、俺も、探しに行く…から」
「だめ、それは駄目」
「えっ?」
 予想外の即答に驚き、クラウドは顔を上げる。と同時に、柔く唇を塞がれた。そのうちに口内に舌を入れられて、クラウドは慌ててザックスにしがみつく。
「ふたりで一緒に探しに行ってたら、すれ違ったりするかも知れないだろ」
「んぅ…」
 まだ唇が触れるくらいの距離で、ザックスの瞳にまっすぐ見つめられる。優しい瞳に、どきどきした。
「俺が絶対探しに行くから、クラウドは待ってて。さみしいかも知れないけどさ」
「…だったら、最初から離れたくない、な」
「ん、だから、もしもの話」
 再び唇を重ねられる。スイッチが入ってしまったのか、キスは深くなる一方で。顔中がほてって熱かった。
 やがてザックスの愛撫も落ち着き、クラウドは熱に浮かされたような瞳でザックスを見上げる。彼は、慈愛に満ちた優しい瞳で、クラウドをじっと見つめていた。
「な、約束」
「ん、」
 クラウドが小さく頷くと、今度はそっと瞼にキスをされる。まんまと流されたクラウドが物足りなく感じ、きゅっとザックスにしがみついた途端。
「あっ、そーか!」
「えっ?」
「よし、俺は何書くか決めたぞ!!」
 そんなことを言いながら、ザックスはあっさり意識を紙に向けてしまう。願い事を書こうとしていた色紙。
 …ザックスのばか。お預けを食らった気分になって、クラウドは珍しいことを考えていた。
「…何、書くの?」
 少しむくれていたものの、クラウドはザックスにひっついて問い掛ける。そうすれば、ザックスの意識が再びクラウドに向くと、分かっているかのように。そしてザックスも、ペンを片手に再びクラウドを見た。
「川を渡るのは俺にやらせろ! ってな」
「へ…?」
「お前はすぐに無理するから、そうならないように願掛け♪」
 ザックスは満面の笑みで満足そうだが、クラウドにはよく意味が分からない。そんなことをわざわざ願い事にして、何が嬉しいというのだろう?
「…よく、分からないんだけど」
「まぁまぁ、いいじゃない♪ あ、お前どうするか決まった?」
「ん……き、決める」
 本当は、よく意味の分からないことでザックスの意識が自分から逸れたのが不満だったのだけれど、ザックスがあんまり楽しそうに問うてくるから、クラウドも願い事に意識を戻さざるを得なくなった。
 いや、ほんとは、願い事なんて初めから決まってる。夢は努力すればきっと叶うと信じているから、努力だけではどうにもならないことを。
「ん? どうした、クラウド?」
 クラウドがひとりで赤くなっていると、ザックスがきょとんと首を傾げた。クラウドは答えず、そのままひとり俯いて。
「クラウド??」
「ん、お、俺も…決め、た」
「おっ。何なにっ?」
 きっとザックスのことだから、クラウドが書こうと思ったことなど、お見通しに決まっている。クラウドは答えず、代わりに色紙に想いを綴った。そしてそれを、ついとザックスに差し出して。
『一生、離れたくない』
 そんな大胆なこと、今のクラウドには口にはできなかった。だから真っ赤になって俯いて、ただザックスの反応を待つ。
「クラウド」
 耳元でそっと囁かれ、どきんと胸が高鳴った。
「大丈夫、叶うよ。俺たちなら、絶対」
「ん…」
 再び落とされる口付け。そして今度こそ求め合う。今この時が、何事もなく続いていくと、それを確かめ合うように。












 そうして共に願いを掲げたのは、いつのことだったろう……?




























『一生、離れたくない』
 今年も、クラウドはそう記した。
 初めてふたりで願いを掲げてから、何度こう書いただろう? 勿論、とても書けなかった時もある。それでもここ数年は、決まってこう記していた。
 残酷な時が訪れて、ザックスはひとり川を渡った。生者と死者を分かつ川。数回に渡る戦いののち、ある七夕のときにそう思った。ザックスの願いは残酷な形で実現し、クラウドの願いは叶わなかったと。
 それでも今また願いを綴る。天の恋人にあやかる願い、掲げた想いの強さを、今はとても感じているから。
 ベランダに足を運んで、旅の仲間が譲ってくれた笹に色紙をつける。そして、ふと下を見た。思わず緩む頬、うん、そんな気がした。
「クラウド?」
「ん?」
「なんでもう笹があんの?」
 きょとんと見上げる彼の手には、立派な笹が1本。まさか、ウータイまで行っていたのか。そう思ったら笑えてきた。
「あっ、なに笑ってんだ! 地味に大変だったんだぞ!」
「お前が俺と同じこと考えてるから」
「へぇ、そうだったのか?」
 身を乗り出して頷けば、なぜか彼は得意げで。どうせ、また「さすがクラウド」とか言い出すのだろう。何がさすがなのか長らく謎だったが、単に「同じこと考えるなんて、やっぱ俺たちの相性、最高!」ということだったらしい。
「早く中に入れよ。疲れてるだろ、風呂にするか?」
「ん? いや」
「…先に飯か?」
「いんや?」
 魔晄の瞳が捉える彼は、にやにやと下心見えまくり。まぁ、分かっていて乗ったのは自分だけれど。
「分かったから、さっさと入れ」
「そーするっ♪」
 どこの子どもだと思ったが、本当は期待している自分も似たようなものだ。クラウドはベランダから部屋に戻ると、階段下に耳を済ませる。もう何度も交わしたやり取り、それでも必ず欠かさないやり取り。






 彼の願いは実現した。
 ふたりを分かつ大きな川、それを渡るのは自分だと。


 だから今度は同じ願いを、ふたり仲良く寄り添わせて。




 

「ただいま、クラウド」
「おかえり…ザックス」

 





 

 一生、離れたくない。

 今度こそ、絶対に。


                                  fin.

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戦BAの半兵衛と、FF7のザックラにぞっこんフィーバー中。

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