すいーと・すいーと
黎が管理・運営しているきまぐれブログです。 初めてお越しの方は、カテゴリー「about」内の「はじめに」という記事をご覧ください。 女性向け要素、同人要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。
とりあえず、これでホワイトデーネタは全部のはずだ!
な、長かった…どういう順番でアップされているやら;
半幸だけは12日にアップしてありますが。
最後を締めるのは慶半でございますv
これを書いていて何が楽しかったって、
久々にこんなにデレデレな半兵衛を書けたことです。
もう…うちの慶半は、傍迷惑なレベルのバカップルと化している;
バレンタインがあんなんだったので、
慶次君においしい思いをさせてみました。
なんていうかもう…ホワイトデーという恋人たちの記念日にかこつけて
人目も憚らずいちゃついてるだけの話になりました(苦笑)
では、宜しければ続きにお進みくださいませv
「Sweet kiss」
隣を歩く半兵衛の手を、そっと握ってみた。間もなく絡む指先。嬉しくなった慶次はすっかりとろけた顔をして、僅かに声を出して笑う。それを聞きつけたのか、傍らでくすくすと小さく笑う声が聞こえた。
「まったく、小学生みたいだね」
「ん? 何がだよ?」
「手を繋いだくらいで、そんな嬉しそうに笑うなんて。付き合い始めてからどれくらいになると思ってるんだい?」
「いいだろ、別に。今日は恋人のイベントなんだしっ」
喜々とした慶次の声に、半兵衛がやれやれと言いながら肩を竦める。とはいえ、その声は明るく、ちらりと顔を見やれば半兵衛は穏やかに微笑んでいた。にっと笑って手に力を込めると、半兵衛が甘えるように体を寄せてくる。白銀の柔い髪が、慶次の鼻先をくすぐった。
人目も憚らずに寄り添い合う。そうして並んで歩くことを望むようになってから、どれほどの時が過ぎただろう。夢はこうしてうつつとなり、ぽかぽかと心が温かい。恋に浮き足立つ様は、正しく子どものようなのだろう。それはきっと、半兵衛だって同じことだ。
特に目的地も決めず、交わす言葉も少なめに歩き続ける。どこで渡そうかなぁ、とひとり考えながら、慶次は肩にかけた荷物を伺った。
「慶次君、どこかで少し休まないか?」
そんな慶次の様子に気付いたのか、半兵衛がそう声を掛けてくる。そうだな、と答えると、休めそうな場所を探して視線を飛ばした。もう少し行けば、外にテーブルと椅子のあるカフェがあるようだ。
「おっ、いいとこめっけ。なぁ、あそこで休もうぜ」
「そうだね。じゃあ僕は席を押さえておくから、注文は任せたよ」
「おうっ」
いつものやり取りをしながら、足取り軽く目的地へと向かう。半端に早い時間帯なのが幸いして、店自体も空いていた。
荷物を持ったまま慶次が店に入ろうとすると、外の椅子に腰かけた半兵衛が声をかけてきた。
「置いていけばいいじゃないか」
「ん? ああ、大丈夫大丈夫。財布奥のほうにしまっちまったから、持ってくよ」
「ふぅん? まぁ、別に構わないけどね」
そう言う半兵衛は妙に楽しげだ。こんにゃろ、という気持ちが沸き起こり、慶次は遠慮なく半兵衛の頭に手を伸ばす。もちろん半兵衛は慌てて慶次の手を掴んだが、力の差を考えればそれもあまり意味はなさない。
「あーもー、どーせ気付いてるんだろっ! わざとらしく訊くんじゃねーよっ」
「ちょっと慶次君っ! 外で何をするんだっ」
ぐしゃぐしゃと髪を掻き混ぜながら、慶次は「お前が悪いっ」と笑う。半兵衛とて本気で抵抗しているわけではなく、まるで子猫のじゃれあいだ。慶次は荷物の上のあたり、すぐに取り出せるところに、半兵衛へのプレゼントを入れていた。ここで財布をあされば、半兵衛にそれが見えてしまう。それを心得ている半兵衛の顔ときたら、悪戯をしかける子どものようだ。慶次じゃあるまいし。それとも、いつも一緒にいるから伝染したか。ひとしきりじゃれあうと、慶次は荷物を肩にかけたまま、店の中に入っていく。
ふたり分の飲み物の乗ったトレイを持って半兵衛のもとに戻ろうとして、慶次はふと足を止めた。それから、そのまま暫く半兵衛に見とれてしまう。少し離れたところから見つめる恋人の横顔は、なんだかとても美しかった。あんなにも美しい男だったろうか。いつも近くにいるせいで、見逃していただけなのだろうか。
そうしてぼんやりと突っ立ったまま半兵衛を見つめていたが、そのうち半兵衛がふと振り向いて、慶次は我に返った。いけない、すっかり待たせてしまった。悪い悪い、と言いながら早足で半兵衛のもとに戻り、慶次はようやく荷物を下ろす。
「随分と遅かったね。混んでいたのかい?」
「いやぁ、つい半兵衛に見とれちゃって」
少し照れ笑い混じりの慶次の言葉に、半兵衛は軽く肩を竦めて苦笑した。半兵衛は、あまり自分の女顔を好んでいない。分かってはいるものの、それでも慶次にとって、彼の美しいかんばせは自慢ですらある。半兵衛が口を開くより早く、慶次は言葉を続けた。
「絶対に前よりきれいになってるぜ」
「君は、僕が喜ぶと思っているのかな?」
「俺、嬉しいんだよ。人は恋するときれいになるだろ。ホント嬉しいなぁ、お前が俺に恋してくれて、前よりもっときれいになってくれてさ」
半兵衛の苦笑が、照れ笑いに変わった。ほんのりと桜色に染まった頬がいとおしい。
「まったく、大した自信だね」
「へへっ。でも、俺に自信つけさせたのはお前だからな」
「へえ?」
「バレンタインに、俺にチョコくれただろ」
言いながら慶次は荷物に手を伸ばす。幸せそうな半兵衛と見つめ合いながら、慶次はそれを引っ張り出した。
「これ、そんな大層なもんじゃないけど、バレンタインのお返し! ありがとな、半兵衛!」
そう言って手渡したのは、小さな、しかし洒落た袋だ。半兵衛はそれを受け取ると、優しく笑いながら告げる。
「甘いものは得意じゃないって知っているじゃないか」
「そのくらいなら食べられるだろ?」
「まったく君という人は。…ふふっ、ありがとう」
嬉しそうな半兵衛の微笑みに、慶次の胸が温かくなっていった。そして席を立つと、半兵衛に渡した袋をひょいと取り上げ、勝手に口を開ける。透明な袋に入っていたものは、チョコや砂糖をまぶしたクッキーだ。
「お前が思ってるほど甘くないって」
「君にとって甘くなくても、僕にとっては充分甘いんだよ」
「じゃあ、試してみるか?」
そう言って、慶次はクッキーを口に放り込んだ。
そのまま唇を押しつけ、半兵衛の唇を開く。深く口付けながら、口の中のものを流し込んだ。じんわりと広がる甘味。半兵衛が少し苦しそうにしがみついてきた刹那、嚥下した音が響く。ゆっくりと唇を離すと、わずかに糸が引いた。
「……甘すぎ」
間近な唇が、小さな声で呟いた。
「そうか? なんなら全部こうやって食わせてやるよ」
「まったく、屋外で何をするんだい。人がいないから良かったものの」
少し拗ねたような声がなんだか可愛かった。慶次は笑うと、自身の唇を軽く舐める。まだ少し甘味が残っていた。
「へへっ。まぁ、来年は気をつけるからさ」
「やれやれ、来年まで待たなければいけないのかい? もっと早くに意識を変えてもらいたいね」
「ん~、努力はするけど、多分あんまり意味ないぜ」
「おや、どうして?」
「お前がこうやっていてくれたら、俺もう自分抑えられねえもん」
にっと笑いながら明るい声で告げる。恋に舞い上がる慶次の顔は、すっかり歓喜の色に染まっていた。
半兵衛もまた幸せに顔を緩め、ふとテーブルに手を置いて体を乗り出す。それから慶次の唇に、軽く自らのそれを重ねた。
幕
戦BAの半兵衛と、FF7のザックラにぞっこんフィーバー中。
09/02/19 ブログ始動