すいーと・すいーと
黎が管理・運営しているきまぐれブログです。 初めてお越しの方は、カテゴリー「about」内の「はじめに」という記事をご覧ください。 女性向け要素、同人要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。
明日からの旅行に備えて記事をまとめてアップしたかったのに!
といいつつ、きっちりザックラはアップしたします(苦笑)
初書きです、ザックス。あと子チョコボ時代のクラウド。
…なぜかクラウドがものすっごい乙女思考になりましたが;
お、おかしいなぁ。どこでこんなんなっちゃったんだろう…?
そして、ただいまザックス視点のザックラも書いてるんですが、
そちらではザックスがやたら妄想逞しく、謎な方に走ってます;
ふたりしてなぜ!(汗)
と…ともあれ、ザックラも甘あまを目指してます!
多分、もっとクラウドが突っ張ってたほうがいいのかなぁとは思いつつ、
ザックス大好きで油断しまくりな、
世間知らずの坊やのようになってしまいました;
ザックスは初めから過保護気味なイメージだったんですけどね。
多分CCの後半のイメージのせいだと思うんですけれども。
あ、クリアしましたですよ! 感想は…ま、また後日;
それでは、お読みくださる方は続きにお進みくださいませ!
神羅時代のふたりでございます。
前半は少々暗めですが、後半は満足な仕上がりになりましたv
…うーん、未だにうまい続きの入り口の文句が思いつかない…;
Face-to-face
ザックスの帰りは遅い。
広々とした部屋で、クラウドはひとり小さな溜め息を洩らす。それももう何度目のものかはわからない。ためしに窓のそばに行ってみて、外を見下ろしては見たものの、ここは地上から離れすぎていて人の姿など見えなかった。
わかってはいるのだ。クラス・1stのソルジャーであるザックスは、任務となった途端に急に忙しくなり、いつ帰るかなどわかりはしない。特に今回の任務は、危険度の高さのあまり、あのセフィロスが同行している。そんな彼から急にメールが入ったのは今日の昼過ぎ。今夜中に帰れそうだ、という内容のそれは、既に危険からは遠ざかっていることが伺えたものの、それでもクラウドの胸にある不安を消すには足りなかった。危険な土地に赴いている限り、ザックスの側には常に危険が付きまとう。クラウドが安心できる術はただひとつだ。早くザックスの顔が見たい。もう半月以上ザックスの顔を見ていないのだ。早くザックスの顔が見たい。早くザックスの顔を見て、声を聞いて、不安を一掃して欲しい。
そんな願いとは裏腹に、ザックスが帰ってくる気配はない。とうに日付は変わっている。夜明けまではあと3時間を切った。クラウドは眠気に落ちようとする瞼をこすり、ひとり必死にこらえる。ザックスの元気な姿を見るまでは眠れない。早く、早く帰ってきて、ザックス。
広い部屋に響くのは、チッチッチッチと一定のリズムを刻む時計の針の音だけだ。それはクラウドを不安にさせるだけの効果しかなかった。もしも夜明けまでにザックスが帰ってこなかったら? ザックスの身に、一体何が起こったというのだろう? 一度マイナスのほうに進みだした思考は止まらない。帰還中にヘリがモンスターの襲撃に遭う可能性は、クラウドも身をもって知っている。あの時は運よく誰も命を落とさずに済んだが、そんな幸運が続くだろうか? いや、そうでなくても、任地を出る前に想定外の事態が起こる可能性も……
そこまで考えて、クラウドは抱えた膝に顔をうずめる。ザックスを信じろ。もしも何かが起こったとしても、ザックスは1stのソルジャーだ。そう簡単にやられはしない。伝説の英雄だって一緒じゃないか。大丈夫、きっとザックスはもうミッドガルに着いていて、上司に捕まって自分の部屋に戻ってこれないだけだ。きっとそうに決まってる。大丈夫、大丈夫、ザックスは絶対に戻ってくる。元気な顔をして、いつもみたいに元気に戻ってくる。
どれくらいそうしていたのか、クラウドは少しだけ顔を上げた。目の前の低いテーブルには食事が用意されているが、放置されたまま何時間も経っている。きっとザックスは疲れて帰ってくるから、料理をする余力なんてないだろうと思って、クラウドが一生懸命作ったものだ。最初にメールをもらった時点で、既にかなり遅くなるだろうとは思っていたから、冷めても大丈夫なものを作ったつもりではある。でも、さすがに時間が経ちすぎてしまった。
もうひとつ溜め息をつくと、クラウドなゆっくりと立ち上がる。いい加減に片付けよう。もしザックスが帰ってきたとしても、こんなもの出せないじゃないか。そう考えたら、後は早かった。ためらいもなく、皿の上のものをビニール袋の中に落としていく。ザックスの部屋に捨てていくのは気が引けた。こうしておけば、自分の部屋に持って帰ることができる。そう思ったら、今度はもうこの部屋から出て行ったほうがいいように思えてきた。こんなに遅い時間になったのだ、もしザックスが戻ってきたら一刻も早く寝たいところだろう。だったら自分はいるべきではない。顔が見たいから待っているというのは、クラウドの我が儘でしかないのだから。それに、夜が明けたら、クラウドも自分の任務が待っている。ザックスに会えないのなら、少しだけでも寝ておこう。どこかさみしい気持ちを抑えることができないまま、クラウドは手早く食器を洗い、そのまま部屋を去る準備を始める。
部屋を出ようと思って一歩踏み出し、そこでふと足を止めた。振り返って改めて部屋を見回す。クラス・1stのために用意された広い部屋だ。一兵士に過ぎないクラウドの部屋とはわけが違う。合鍵をもらい、自由に部屋に出入りしていいとは言われているものの、やはりこの部屋に入った途端にザックスとの間にある壁を感じてしまうのが常だ。立場が違う。それを嫌というほど実感してしまう。本来なら、クラウドにはこの部屋に出入りする資格などないのだ。
(なんだか、情けないな…)
初めての恋人だった。付き合い始めてからそろそろ3ヶ月になる。それでも、互いに任務があるため休みが合うことはそう多くはないし、デートらしいこともしたことはない。進展といってもキス止まりだ。ザックスのためにいろいろしてあげたいと思うものの、現実と理想はあまりにも遠く離れ、クラウドは正直なところ悲しくなっていた。こんなに好きで、大好きで、もうどうしようもないほど好きでたまらないのに、いつもその気持ちを満足に伝えられない。その引け目はいつだって、クラウドは本来ならザックスとは遠い存在なのだという、どうしようもない事実から来てしまう。ザックスはいつだって愛情いっぱいに包み込んでくれる。それなのに、俺は何も返すことができていない。こうして待っていても、もしそれを不愉快に思われたら。…クラウドが自己満足のために待っているだけだと気付かれ、疎まれてしまったら。マイナス思考は止まらない。
手に持った、自分で作った料理の残骸の重みが、悲しかった。
すっかり俯いてしまったクラウドは、また小さな溜め息をついて、くるりとくびきを返す。ザックスならきっと、寮に戻ってきた時点でメールをくれるだろう。…もらえなかったとしても、それはそれで仕方がない。そんなことを考えながら、クラウドがドアに向かって歩き出したときだった。
「クラウドッ!?」
「っ…!?」
派手な音と主にドアが開け放たれたと思った次の瞬間、目の前に現れる見慣れた人影。
待ちわび続けたその人が、いつもと変わらぬ姿で立っていた。
「クラウド、お前、待っててくれたのか…!?」
驚いた様子のザックスに、クラウドもまた驚かされてしまう。うん、と言いながら小さく頷くと、ザックスの頬がみるみる上気していくのが見て取れた。それからザックスが少し駆け寄って、クラウドの顔にそっと手を伸ばしてくれる。触れた指先は、とても温かかった。
「こんな時間まで待ってることなかったんだぞ」
「いいんだ。…俺が、待っていたかっただけ、だから」
それだけの言葉を紡ぐのに、酷く照れくさくなる。どきどきと胸が波打って、顔が熱くなっていった。嫌がられるだろうかと思っていたクラウドの言葉はとてもおどおどとしたもので、心なしか上目遣いになってしまう。じっと見つめるザックスの顔は思ったよりずっと元気そうだ。それが見られただけで、もういい。元気に戻ってきてくれた。
「それじゃ、俺、もう部屋に戻るよ」
よりによってドアの前でいきなり顔を合わせる羽目になったのが、なんだか無性に恥ずかしくて、クラウドはそそくさと逃げ出そうとした。何を考えていても、いざザックス本人を目の前にすると、自分の考えが恥ずかしくなってしまう。なんとくだらないことを悩んでいるのかと。…そう感じるのが驕りでないと、それをただただ願いながら。
ところが、脇をすり抜けようとしたクラウドの前に、そっとたくましい腕が伸ばされる。
「待てよ。待っててくれたんだろ?」
見上げたザックスの顔は、とても優しく笑っている。魔晄を浴びた美しい瞳が、じっとクラウドの姿を映していた。こうしてザックスに見つめられては、クラウドはもう逃げられない。
「俺が帰ってくるの、ずっと待っててくれたんだな」
「…う、うん」
顔が赤くなっているのを感じながら改めて頷く。一方で、優しい微笑を浮かべていたザックスが、あっという間に破顔していた。そしてクラウドが次を予測した瞬間には、ザックスは既に行動を起こしていた。遠慮のかけらもなく、思いっきりクラウドを抱きしめたのだ。
「ぅわ…っ!」
「くう~っ、嬉しいっ!! ありがとうな、クラウド!」
「ざ、ザックス…っ」
「ちょっとでも早く、お前に会いたくて仕方なかったんだ!」
ぱっと体を離してそう言ったザックスの顔は輝かんばかりで、見ているこっちが恥ずかしくなる。全身全霊で喜んでくれた。ただ待っていた、ただそれだけのことで。頭の芯が熱くてくらくらする。
「ね、今帰ってきた俺に、何かひと言ないの?」
「え?」
「何かあるだろ? 外に行ってて帰ってきた相手に言う言葉」
クラウドを腕に閉じ込めたままのザックスの息が鼻先にかかって、どきどきして。ようやくクラウドが我に還ったのは、それから5・6秒の沈黙のあとだった。彼の言わんとすることがわかって、少しうつむいて小さく言う。
「…お、お帰り、ザックス……」
たったそれだけのひと言が、あぁ、なんて恥ずかしい。
とてもこれ以上、ザックスの顔なんか見てられない。
ところが、そんなクラウドの抵抗もむなしく、ザックスがクラウドの顔を覗き込んできた。それから心底嬉しそうに笑って、優しい声で紡ぐ。
「ただいま、クラウド」
言った途端にぐっと近づく魔晄の瞳。柔く唇が触れ合う感触に、クラウドの全身が固まった。
触れ合うだけの優しいキスのあと、まだ唇が触れ合うほどに顔を近づけたまま、ザックスが優しい声で続ける。ザックスのキスはまるで魔法だ。それだけでクラウドに言うことを聞かせるに充分な威力がある。
「今から部屋に戻るんじゃ、それだけで時間がかかって仕方ないだろ。俺のとこで寝てけ。な?」
「で…でも、ザックスは疲れているだろ」
「今ので飛んだから大丈夫」
言いながら自分の唇に触れて見せた。こうなったらもう、クラウドには頷く以外の選択肢はない。そうでなくても、きっと相当赤い顔をしているだろうから、あまり人目につきたくないというのは正直なところだ。
「安心しろって、手ぇ出したりしないから」
「…そうしてもらえると助かる…」
「あれっ、俺信頼されてないね~」
「そ、そういうわけじゃないんだ、ただ俺は明日は任務が…」
「わかってる」
どこか悪戯っぽかった声色が、優しいものに変わる。温かくて大きな手が、クラウドの金髪を優しく撫でてくれた。
「冗談だって。ありがとう、クラウド」
あんなことを言いながら、クラウドは心のどこかで思っているのだ。本当は、あんたにだったら、どんなことをされたっていいんだ、と。
温かい手がとても心地よくて、クラウドは目を瞑ってその感覚に身を委ねていた。
「では、俺はそろそろ寝るとしよう」
――…………
「ッ!!!!!!?」
突然響いた思いがけない声に、クラウドは仰天した。そして更に続く、思いがけないザックスの言葉。
「ああ、じゃあまたな! おやすみ、セフィロス」
「ああ」
ゆっくりと立ち去っていくセフィロスの姿。顎を上げたクラウドの目に映った端正なかんばせ、その唇が、うっすらと笑っていたのがわかった。クラウドは混乱しながらも、ひとつだけはっきりと認識していたことがある。それは、ザックスの言葉が、セフィロスがその場にいたことを予め知っていたものだったという事実だ。
見られてしまった。一部始終。
「ん…? クラウド、どうした?」
顔中、耳に至るまで限りなく赤く染まったまま口をぱくぱくさせているクラウドの様子に気付き、ザックスが本当にきょとんとした面持ちで問うてくる。途端、クラウドの中で、何かが弾けた。
「ざ…ッ」
「ん? だから、何?」
「ザックスの大馬鹿野郎ッッッ!!!」
声を限りに叫んで拳を逞しい胸に叩きつける。人前で、しかもよりによって伝説の英雄の目の前で。クラウドの羞恥ゲージが限界値をはるかに突破して、完全にブレイク状態になっていた。さすがに察したザックスが慌てて謝るも、既に後の祭り。クラウドは恥ずかしさのあまり、顔を上げることすらできない。
そんなふたりのやり取りを耳に入れながら、かの英雄が微笑ましく思っていたことなど、もちろんクラウドに走る由もなかった。
幕
戦BAの半兵衛と、FF7のザックラにぞっこんフィーバー中。
09/02/19 ブログ始動