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すいーと・すいーと

黎が管理・運営しているきまぐれブログです。 初めてお越しの方は、カテゴリー「about」内の「はじめに」という記事をご覧ください。 女性向け要素、同人要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。

2024.11.22
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2009.02.14
実際に書いてるのは2/25です(苦笑)
続きに慶半バレンタインネタを置いておきます。SSです。
現パロですので、一応ご注意をば。

それでは、お読みくださる方は続きへどうぞ!






「僕の想い、君の想い。」


  今年のバレンタインデーは休日だ。お陰で、デートには誘いやすかった。そこまでは良かった。そこまでは良かったのだが。
「どうしたんだい、慶次君。なんだか落ち着かないね」
「そうか? いつもと変わらないだろ?」
  半兵衛の問いかけに、慶次は明るい声で応じる。しかし、半兵衛は慶次の本心などお見通しだ。彼は肩を竦めると、視線を外してぽつりと呟いた。
「慶次君。僕が君に一番されたくないことくらい、わかっているはずだろう?」
「んー…わかってるよ」
  やれやれ、と小さな溜め息が聞こえる。そう、わかっている。女のような扱いをされることを酷く嫌う半兵衛が、バレンタインデーにチョコを贈るという女のようなことを、する訳はないのだと。頭ではわかっているのだが、それでもやはり少しさみしい。人好きのする慶次はたくさんの義理チョコをもらったが、本命の恋人からはもらえないというのは哀しすぎる。
  それでも、デートのために1日空けておいてくれたのだ。それで充分じゃないか、と慶次は自分に言い聞かせた。半兵衛とふたりで過ごせることに変わりはない、それが何よりではないか、と。
  …そう言い聞かせたつもりだった。
  食事をしている間も本屋を散策している間も、どうも半兵衛の機嫌はいいとはいえない。それが気になるたびに、慶次はまた挙動不審になってしまう。慶次が半兵衛からチョコをもらえるかもと期待していたのが、よほど彼の気分を害してしまったのか。微妙な空気は夕方まで続き、半兵衛が突然、ぽつりと呟く。
「悪いが、慶次君。今日はもう帰らせてくれないか」
  言われた途端、心の奥底が冷たくなった。
「……えっ…、まだ4時過ぎたばっかりだぜ」
「少し気分が悪いんだ。済まないが、今日はもう」
  言葉は丁寧だし、声音も穏やかだ。しかし、有無を言わせない強さがある。こういう態度を取られては、慶次には為す術がない。
「気分悪いなら、家まで送るぜ」
  動揺を隠しながらそれだけ言った。しかし、半兵衛の答えは素っ気ない。淡々とした声が短く告げる。
「いや、ひとりで帰るから」
  慶次には、返す言葉が見つからなかった。


                 *          *          *


  家に帰ってから、慶次はすっかりしょげてしまっていた。
  ひとり黙々と食べているのは、昨日学校やバイト先の女友達からひと足先にともらった義理チョコだ。確かに数は多い、本命チョコがないのは「恋人いるから」と断ったためである。しかし、たったひとつ欲しかったチョコが、慶次の手元にはない。それどころか、夜まで一緒に過ごそうと思っていた人自身すら、今は一緒にいないのだ。段々とむなしくなってきて、慶次はチョコを食べるのをやめた。
(はぁ…。そりゃ、わかっちゃいたけどさ…)
  自分は恋人に多くを求めすぎているののだろうか。半兵衛に対して気を遣うことは、既に自然とやってのけられるようになっている。それでも慶次だって、求めたいときはあるのだ。普段から半兵衛が嫌な思いをしないで済むよう心掛けているのに、なんだか報われない。慶次は四肢を投げ出した。もう寝てしまおう。起きていても、いいことは考えられそうにない。
「慶次ー!」
  不貞寝に入ろうとした途端、襖越しに大きな声で呼ばれ、慶次はますますしょげてしまった。
「なんだよ、まつ姉ちゃん」
「まぁ、なんですか、ふてくされた声を出して」
  下手に言い返せば叔母の説教が飛んでくる。これ以上凹んだら立ち直るのに時間がかかりそうだ。なんでもねえよ、と空元気の声を飛ばし、襖を開けようと体を起こす。
「あなたに届け物ですよ」
「届け物? なにそれ?」
「さあ、なんでしょう。郵送されてきた物ではなさそうですよ」
「は?」
  疑問符を浮かべながらまつが持っている小さな箱を受け取ると、確かに住所は書いていなかった。その代わりに、秀麗な字が短く書きつけられている。
  それを見るなり、慶次は目を見開いた。
「へっ……? まつ姉ちゃん、これどうして」
「郵便受けにそのまま入っていたそうですよ。先ほど犬千代様が帰ってきたら、入っていたとのことで」
「あ、ありがとな、まつ姉ちゃん!」
  喜色満面に笑い、慶次はひとりにしてくれるように頼む。驚いた。手のひらに収まるほど小さな箱を、胸を高鳴らせながら開ける。それからすぐに、慶次は携帯電話に手を伸ばした。
「もしもし、半兵衛っ!?」
『…やぁ』
  電話越しの恋人の声は、なんともいえない微妙なものだった。
「あのさっ、今平気かっ?」
  だがそんなことには構わない。弾む声で慶次が問うと、先ほどと同じ、少し口ごもったような声が返ってくる。
『ああ…平気だけど』
「半兵衛、チョコありがとな! ホントありがとなっ!」
  早口に言ううちに、なんだか目頭が熱くなってきた。胸がじんわりと熱くなる。
『……気付いたのかい』
「だって、『慶次』って書いといてくれたろ! 俺、俺、すっげえ嬉しいよ! ありがと、ありがとな!!」
『何も泣くことないだろう』
「泣いてねえよっ」
『…ひとつ言っておくけれど、君が悪いんだよ、慶次君』
「へっ…?」
  思いがけない半兵衛の言葉に、慶次はきょとんと目を丸くした。すると電話の向こうから、半兵衛のむくれたような声が響いてくる。
『せっかく僕が珍しく君にプレゼントしようかなと思って、予め買っておいたのに、あんなに期待されちゃ渡せるものも渡せないじゃないか』
「え…っ」
『普段からあれだけ言ってるから、さすがにチョコなんて期待してないだろうと思ってたのに。…かと思ったらあんなに落ち込んで』
  慶次は無言で目を瞬かせた。聞こえてくる言葉の羅列があまりにも耳慣れず、頭に疑問符すら浮かんでくる。
『慶次君? 聞いているのかい?』
「あっ、うん、聞いてる…」
『まったく、僕がどんな思いをしたと思って…』
  半兵衛が何かぶつぶつと呟いている。それを聞いているうちに、慶次はなんだか顔が熱くなってきた。バレンタインの時期にラッピングされたチョコを買うなど、普段の半兵衛からはとても想像がつかない。実際、かなり恥ずかしかったのだろう。小さい頃に女の子に間違えられがちだっただけでなく、厚着をしてじっとしていると今でも女と間違えられる半兵衛にとって、ある意味では自虐的な行動ですらあるように思える。そんな思いをしてまで、自分にバレンタインのプレゼントをしてくれたのだ。自分の浅ましさが、恥ずかしくてたまらない。
『慶次君? …本当に聞いているのかい?』
  いささか不機嫌なその声で、慶次ははっと我に返った。
「あ…ご、ごめん」
『……もういい』
「わ、悪かったって! そんなこと言わないでくれよ」
  慶次が情けない声で訴えると、溜め息まじりの声が返ってくる。
『二度と言わないよ。…慶次君、今から会わないかい?』
「えっ!?」
『だから…今日は、デートらしいことしてないから。僕は謝らないよ、君が悪いんだから』
  落ち着いた、しかし少し口ごもったような声。頬を赤く染めた半兵衛の姿が脳裏に浮かんだ。慶次は更に胸を熱くする。
  知らなかった。俺、こんなに愛されていたのか。
『慶次君? 慶次君ったら』
「あ、う、うん! 俺、今からお前んち飛んでくよ!」
『馬鹿を言わないでくれ、僕はひとり暮らしじゃないんだから。どこで待ち合わせる?』
  半兵衛の声が、なんだかとてもいとおしい。いつものとこ、と告げて手短に電話を切ると、手際良くコートとマフラーを身につけた。それから、半兵衛がくれたチョコを、箱のままポケットに入れる。
  会ったら思い切り抱き締めよう。それから彼にキスしよう。


                                                幕

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文字書きで絵描き。
戦BAの半兵衛と、FF7のザックラにぞっこんフィーバー中。

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